日本社会医学会
社会医学会レター
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
社会医学会レター
日本社会医学会 2009-1号 2009年9月9日発行
事務局

〒464-8601 名古屋市千種区不老町
 名古屋大学情報連携基盤センター 宮尾研究室
 Tel/FAX: 052-789-4363 mmiyao@med.nagoya-u.ac.jp

目次 ・第51回日本社会医学会総会 ご案内(第1報)
・日本社会医学会の第50回総会が開催されました。
・第50回日本社会医学会総会のご報告
・日本社会医学会 奨励賞 が表彰されました。
・名誉会員が推薦されました。4名の先生方です。
・3万人自殺時代に思う
・一般演題 発表討議のまとめ
・社会医学研究第26巻2号が発行されました。
・会費の納入をお願いします。
・国民の健康・福祉の向上へ、新内閣の施策が注目されます。

第51回日本社会医学会総会 ご案内(第1報)

企画運営委員長 三戸 秀樹(関西福祉科学大学)

 来年の学会は、大阪府柏原市の関西福祉科学大学で開催します。関西地区は、2003年に第43回総会を同志社大学で、山本繁先生と千田忠男先生の代表で開催しましたので、7年ぶりの開催になります。1994年の第35回総会も同じ同志社大学で、千田忠男先生の代表で開催されています。関西は、会員数が多いのですが、意外に開催は多くありません。そこで、前回もそうですが、今回も関西地区の理事・評議員など総出で、組織的に開催しようと思っています。本学の廣澤先生はじめ、垰田先生や高鳥毛先生、逢坂先生、山本先生、北原先生らと実行委員会を強力に作って、開催するつもりです。重鎮の西山先生や細川先生にもご意見をお聞きし、保健所グループも入っていただこうと思っています。
 会場は、〒582-0026 大阪府柏原市旭ヶ丘3-11-1関西福祉科学大学です。近鉄大阪線「河内国分」駅(急行停車) 下車、徒歩12分です。時期は2010年7月3日〜4日の土日です。新大阪から徒歩を含めて50分でつきます。関西空港からは、南海経由で、1時間40分です。全国の皆さまのお越しをお待ちしております。

第51回日本社会医学会 総会
総会日時:2010年7月3日(土)〜4日(日)
開催場所:関西福祉科学大学 大阪府柏原市旭ヶ丘3-11-1





日本社会医学会の第50回総会が開催されました。

 2009年6月28日札幌医科大学臨床教育棟講堂で開催された第50回日本社会医学会総会で、波川京子企画運営委員長が議長となり、総会が開催されました。総会では、2008年度の学会活動、会計決算報告、2009年度活動方針、予算が決定されました。また、来年春の役員改選の選管が選出され、選挙細則をすみやかに改定することが決められました。総会では、上畑理事長から、若干の役員の追加が提案され、承認されました。また、名誉会員が提案され、承認されました。2009年度奨励賞が5名に授与されました。来年の第51回総会担当の三戸秀樹先生が大阪・関西福祉科学大学への参加を呼びかけました。

第50回日本社会医学会総会のご報告

波川 京子(札幌医科大学)

総会日時:2009年6月27日(土)〜28日(日)
開催場所:札幌医科大学 臨床講堂
参加者:112名
メインテーマ:生存権・健康権のルネッサンス
プログラム構成:第50回記念講演2題、特別講演1題、シンポジウム2題、一般演題34題

 第50回日本社会医学会総会は、国民皆保険・国民皆年金などのセーフティネットの崩壊が進む中で、生命と暮らしを大事にする、国民の生存権と健康権を国策の根幹に据える社会保障を考える機会とすることを目的に、メインテーマを「生存権・健康権のルネッサンス」としました。
 総会プレ企画として、乳児死亡ゼロを達成し、乳児医療無料化・老人医療費無料化を全国に先駆けて実施した、岩手県旧沢内村の地域医療の活動をヘルスプロモーション活動ととらえ、「自分たちで生命を守った村」と、旧沢内村の健康づくり哲学を現在に引き継いだ「いのちの作法」を市民向けに上映し、約30名が観賞しました。
 50周年記念講演は2題企画し、1題は北海道勤医協中央病院の大橋 晃氏からは「医療崩壊と医療費抑制策にどう立ち向かう-北海道の医療と保健-」と題して、医療資源の一極集中と過疎地域に2極分化し、医師不足や自治体病院再編で地域から医療が消えるなどの北海道の現状と、先駆的な地域での保健活動から得た解決策が示されました。
 2題目は「広がる社会経済格差と人々の生活・健康・安全-特に労働者の現状を中心に-」と題して、北海道大学大学院の岸 玲子氏から、自殺、過労死、非正規労働者の失業などが人間らしい労働環境を破壊している背景が報告されました。様々な格差が拡大する中で、個人や地域、NPOなど諸団体のエンパワーメントにつながる研究、社会的排除・孤立を予防する研究、早世など健康格差を減らす社会的サポートネットワーク研究の拡大発展を期待していると締めくくられた講演でした。
 特別講演は、旭山動物園の創立、苦境、再生、全国からの注目される動物園づくりに立ち会った旭山動物園初代園長の菅野 浩氏から、「命の輝きをつたえる-旭山動物園の試み-」と題して、動物たちの能力を引き出し、命の輝きを伝える工夫の中から行動展示が生まれてきた経過が語られました。動物園は、お客さんが動物たちの満ち足りた姿を見て幸せを感じ、命の大切さを学ぶことができるところです。そんな動物園が存続し、発展していくためには、平和でなければならないと締めくくられました。
 シンポジウムの1つは世界的な食糧危機の中で、「食の安全と農業」をテーマにしました。北海道大学名誉教授の大田原高昭氏から「今日の農業と食の安全」を、全国農民連会長の白石淳一氏から「世界に広がる食糧主権」、コープさっぽろの石坂裕幸氏からは「消費者の視点から見た食の安全」をそれぞれの立場から提案いただき、日本の食糧基地としての北海道の役割を見直し、農業を発展させる取り組みが報告されました。
 もう1つのシンポジウムは、経済不況から抜け出せない経済格差の中での「現在の貧困」を50周年記念講演とタイアップさせながら、北海道大学大学院の青木 紀氏から「現在の貧困」のとらえ方、北海学園大学の川村雅則氏は「ワーキングプアをなくすには」と題した北海道の現状報告、四天王寺大学大学院の逢坂隆子氏は「ホームレスの自立支援」の実践報告が出されました。
 一般演題は36題が登録されましたが、報告された演題は34題でした。1題はやむ得ない事情でしたが、1題は中国からで開催前日のキャンセルでした。第50周年記念講演を2題企画したために、一般演題の会場が4ヵ所に分散する異例の運営になりましたが、演題は医療現場での課題、ホームレス・派遣村、労働災害、高齢者介護、高校生の性行動、障害児教育、感染症、メンタルヘルスなど医学が社会の一員として活躍する上での基軸を示した報告と活発な意見が出されました。
 参加者112人に占める学生・院生は約3割を占め、社会医学に関心のある若い研究者、医療従事者の研修と研究成果報告の場となっているといえます。また、医療関係者だけでなく、経済学分野や獣医学、工業分野、福祉分野、教育分野からの参加者もあり、学際的な討論を活発にすることができました。
 心配された赤字を計上することなく、参加者からはさわやかな北海道の気候、会場の利便性も含めて、内容、熱気、社会情勢とテーマの符合と三拍子そろった学会であったとの評価を得ることができました。ご参加、ご協力、ご助言ありがとうございました。

日本社会医学会 奨励賞 が表彰されました。

 第50回社会医学会で、波川選考委員長・千田副委員長らにより、5名が奨励賞に選定され、賞状と記念品が上畑理事長から授与されました。
岡田 栄作(北海道大学)
「PSWの心理的・身体的ストレスとその関連要因についての考察」
北島 史子(九州社会医学研究所)
「じん肺(間質性肺炎)と労災申請」
代田 和博(代々木病院)
「『派遣村』からの結核患者」
田中 勤(名古屋市立大学)
「深夜の繁華街における虞犯少年の社会医学的研究」
中山 直子(首都大学東京)
「児童・生徒の生活習慣と親の健康意識との関連」

名誉会員が推薦されました。4名の先生方です。

神谷昭典氏、刈田啓史郎氏、山岸春江氏、山本繁氏
ご本人が正会員のままで活動したい、と辞退することもありえます。

3万人自殺時代に思う

上畑鉄之丞(過労死・自死相談センター)

 ☆自殺死亡が3万人を超えて今年で12年目。もっともこの統計は自殺死亡統計のうち、警察庁の自殺統計によるもので、死亡診断書や死体検案書をもとにしたる厚生労働省の人口動態統計の自殺死亡では3万人以下になったこともある。両統計ではほとんど警察庁統計のほうが多いのだが、過去30年間での両者の差では気になっていることがある。というのは、1979年からの10年間の毎年の差は平均458人と人口動態統計の自殺が約500人少ないのだが、1989年からの次の10年間になると、その差は平均1003人と増加。そして、自殺死亡が恒常的に3万人台になった1999年から08年までのこの10年間では、毎年平均2010人にまで拡大する。つまり、死亡診断書や死体検案書で「自殺」と記載される場合が年々少なくなってきているのだ。この書類の作成は、もちろん医師の署名のもとにおこなうのだが、死亡病名を「自殺」としないで他の病名にしてほしいという近親者の要望に医師が応えざるを得ない状況が増加しているともいえるのである。なぜこんな減少がおきているか検討しなければならない。
 ★ところで、近年自殺防止活動に取り組む有志の人たちの活動も活発である。「いのちの電話」のように全国規模で以前から活動している活動もあるが、地域レベルで取り組んでいるグループもたくさん生まれているそうだ。そんななかで、筆者は、元NHKディレクターで自殺防止のドキュメント番組を製作したことがきっかけで、自らNPO法人ライフリンクを設立して活動している清水康之さんの活躍に注目している。彼の全国規模の自殺防止活動もきっかけのひとつになって、超党派の議員対策基本法(2006)や自殺総合対策大綱(2008)が生まれたと私は思っているが、この法律や大綱がうまく機能しているのかは疑問。内閣府が出した平成20年度「自殺対策白書」によると、平成18年度184億円、19年度246億円、20年度225億円の予算が自殺防止対策で執行されたとなっているが、これだけのお金が使われたことを実感している人はいるのだろうか。そして、今年度の場合は、当初予算では30億円と激減したが、補正予算で急遽100億円追加されているのだそうだ、最近この自殺防止対策でちょっとした「お涙ちょうだい」発言のエピソードがあったことを前述の清水さんのブログが教えてくれた。
(清水康之さんのブログから)
 内閣官房長官河村健夫殿。平素は、わが国の自殺対策推進にご尽力いただき誠に有難うございます。先日6月18日の読売新聞朝刊に掲載されている貴官房長官の発言、すなわち、党首討論で民主党の鳩山代表が医療事故や若者の自殺問題を取り上げたことについて、「お涙ちょうだいの議論をやるゆとりはないのではないか」、「人の命は重要なテーマだと考えているが、情緒的な話をしている段階ではない」などと語ったとの記事に関して、真意を確認させていただきたくお伺いいたします。貴官は「自殺総合対策会議」の議長もしておられ、自殺対策へのご決意は確固たるものをお持ちと信じておりますものの、新聞記事だけをみますと、「自殺は情緒的な問題であり、自殺対策はお涙ちょうだいの議論」であるとも受け取れます。ぜひ、自殺問題に対する官房長官のご認識と、自殺対策にかけるご決意とをお聞かせいただけないでしょうか。6月24日、首相官邸での河村氏が釈明。「私の言葉の”お涙ちょうだい”が一人歩きしてしまって、皆さんに厳しい思いで受け止められたことについて、とても残念に思うし、申し訳なかったと思っています」、「お涙ちょうだいと言ったのは、自殺問題がそうだというのではなく、党首討論の場において民主党の鳩山代表が、財源論を示さないまま命の大切さを訴え続けた、その討論の仕方を批判したのです」、「政府としても、生活苦や過労、格差など、今日的な問題が自殺の問題に集約されていると受け止め、今回の(補正)予算でも100億円の基金を作った。とくにNPOの方々に使ってもらうために作ったので、ぜひ活用してほしい」。
(ここまで清水氏のブログ)
 つまり、河村氏官房長官は、「自殺対策に取り組むNPOのために100億円の基金を実現(してやった)した」と言っているのです。まさに「思いやり」予算である。ところが,清水氏のよると、この"100億円”の使い勝手が悪すぎるとの声が全国の民間団体から届いており、自治体レベルでの運用もうまくいってないはずという。どこのどんな団体が共に声を上げているか判然とはしないが、筆者のところにもライフノーリンクからメールがきた。ちなみに、平成20年度自殺対策予算(百万)の内訳をみると、1.自殺実態調査221、2.気づき見守り啓発事業1,480、3.人材養成584、4.心の健康づくり4,036、5.適切な精神科医療391、6.自殺防止の社会的取り組み14,116、7.自殺未遂再発防止対策1,730、8.遺族苦痛緩和対策82、9.民間団体連携120、などとなっていて合計225億48百万円。自殺は一向に減っていないのに、これだけのお金がどのように使われたか判然としないのである。案外、どこかの国会議員や省庁の便利な埋蔵金になっている可能性も考えられるのである。
 ☆今年の自殺統計(警察庁発表)について清水氏は、三つの特徴があると言っている。
 ①今年は「10月」が最も多い月だが、これは過去10年を遡っても例がない。9月のリーマンショックの影響と推察される。
 ②年齢構成では 30歳代が過去最多になっている。10歳代、20代も増加傾向にある。中高年世代の自殺の高止まりが続くなかで、若年世代の自殺も増え始め、事態がより複雑かつ深刻になってきている。
 ③要因では、「経済生活問題」の総数はほぼ変わらない、負債関係の項目が11%減少しているのに対して、失業、就職失敗、生活苦の合計が18%も増加している。
 総じて、就職氷河期に社会に出て非正規で働かざるを得なかった30代は、9月以降の世界同時不況の影響が最もシビアに直撃した結果、失業して生活苦に陥り、再就職も果たせないまま、生きる道を失って自殺に追い込まれたのではないか。内閣府の調査で、30歳代は「自殺を本気で考えたことがあるか」の問いに「はい」と答えた割合が最も高かった。多重債務での自殺の減少は、グレイゾーン金利の撤廃や市町村レベルの相談窓口開設や啓発活動などの成果だが、その一方で、「雇用対策」や「生活支援」が現場まで行き届かず、セーフティネットのほころびのなかで自殺に追い込まれる人が増えたのではないかと思う。また、今後は、全国規模の統計だけでなく、市町村レベルの統計も公表し、地域レベルの対策がとれるようにすべきだ。また、自殺動機も、「健康問題が第一」、「経済生活問題が○%」という出し方でなく、要因と要因の組み合わせなど、対策に役立つことを意識したデータを出すべき。WHOは「自殺は避けられる死である」、国の自殺対策大綱は「自殺は追い込まれた末の死である」といっており、追い込まれていく人を自殺から守ることはできるはず。日本でそれができていないのは、対策の根拠となる形で自殺者統計が発表されておらず、戦略を立てることができないことも一因ではないか、と言っている。
 このニュースレターが社会医学会会員の手元に届くころは、総選挙も終わり、新内閣の陣容も決まっている頃かも知れないが、「使い勝手の悪い」100億円の基金の行方を是非確かめたいものだ。

一般演題 発表討議のまとめ

服部 真(石川勤医協城北病院 健康支援センター金沢)
 D-4釜ヶ崎結核患者の生活実態と生活・健康支援−訪問型DOTSを通して(大宮陽子ら)では、日本最大の日雇い労働力市場である大阪釜ヶ崎の結核患者9名(平均70歳)に対して、NPO法人HESOが大阪府保健所から委託されて訪問DOTSを行った経験が発表された。この地域には3万人弱の土木・建築労働者(平均55歳)がおり、住民の1/3が生活保護を受け、結核罹患率は全国平均の33倍と高い。対象患者は慢性疾患を持ち、歯や栄養状態が悪く、孤独であった。訪問に拒否的だったが、徐々に心待ちにし、生きることに前向きとなる過程が報告された。訪問終了により再び孤独に戻る事例も多く、継続的な支援が必要とされた。行政とNPOが連携した教訓的な活動であり、他地域への展開が期待される。
 D-5「年越し派遣村」から紹介された肺結核の一例(代田和博ら)では、2008-9年の年末年始に東京日比谷公園「年越し派遣村」から10人の患者を受け入れた病院の医師がそのうちの肺結核症例について発表した。35歳の男性で埼玉県の製造業に派遣(健診は未実施)されていたが12月15日に解雇され、健康ランドなどを転々とした後、1月2日に派遣村に現れたときの所持金はわずか数百円であった。就労中の12月上旬から咳、熱感等を認めたが、解雇により保険証と収入を失い受診できず、来院時に極度のるいそうと脱水、低酸素血症と肺に巨大な空洞、多数(Gaffky8号)の排菌が認められた。濃厚接触者の大部分が身元不明であった。TV等で大きく取り上げられ、厚生行政を動かす契機になった活動の中の象徴的症例であり、初めての学会発表として極めて貴重な報告である(学会奨励賞を受賞)。
 D-6仕事と病気の関連について−看護学生への意識調査−(青木珠代ら)では、看護学生に職業病や労働関連疾患について仕事との関連の認識を尋ねた結果が発表された。この看護学校では1年次に公害と職業病、2年次に労働関連疾患の講義が行われているため、教育前の1年生に比べ2年以上で関連性の認識が多かった。労働関連性の認識が多い疾患は胃潰瘍で、喘息や糖尿病は少なかった。このような講義を行っている看護学校は少なく、この学校でも何年間にもわたる働きかけでやっと実現した。特定の疾患の労働関連性にとどまらず、悪性疾患、精神疾患、感染症など大部分の疾患の労働関連性へと発展させながら、看護教育・医学教育への提起を期待したい。

羽原 美奈子(北海道文教大学)
 B4木川幸一(国立病院機構北海道がんセンター)、B5枡野裕也(天使病院)は、北海道の医療ソーシャルワーカーにおいて、職務満足度や心理・身体的ストレスの測定を行い、それぞれ職務継続意志やストレス度を報告した。
 B4では、勤務継続意志の差異により、その関連要因を推察したところ職務自由度・支援度が高い人は、労働条件にも満足しているという結果であった。B5では、医療ソーシャルワーカーの心理的ストレスは、業務量の多さにはむしろ関与せず、自己の範疇で仕事のコントロールができない、上司などの支援がない、仕事への満足度が低いなどと関連するとの報告であった。フロアーからは、看護職では離職の問題が大きくなっているが、MSWにおける離職率はどのくらいであるのか、先行文献ではどのように言われているのか、さらに診療報酬改定との関係はあるのかといった質問がなされた。演題報告者からは、すぐに示すことができる根拠となるデータはないが、北海道では、年間50〜60人ものMSWが離職しており、離職に関する要因は職種によってその性質が違い、今後他職との比較検討を行ったり、背後に制度的な問題を探求していくことも課題である。さらに解析方法を深めていく中で、要因との関係を説明しやすく、説得力のある研究にしていくことが望まれる。福祉の研究の中でもこの分野の研究は数少なく、さらにこれらの研究は、MSWの離職防止につながる有用な研究であるので今後の展開に期待する。
 B6河野益美(畿央大学健康科学部)は精神科訪問看護にかかわる看護職のストレスに関する調査であった。日本版GHQ28、SOCスケール等を用い精神科訪問看護にたずさわる看護職のストレス度を測定したが、SOCによるハイリスク群は精神科訪問看護の約半数に上り、看護師の精神健康状態は良いとはいえなかった。どうすれば負担感や困難感を軽減することができるのかという質問に、訪問看護師の力量形成および、訪問件数の制限、訪問を2人体制にするなど看護体制の改善をはかり、地域が一丸となって取り組むストレスマネジメントなどの提言がなされた。
 MSW、訪問看護師は、いづれも患者、地域での生活者の支援をはかり、ともすればライフラインにもつながる重要な存在である。自己の健康管理、ストレス改善、健康維持がはかられ今後活躍されるためにも研究の発展、展開が求められる。

逢坂隆子(四天王寺大学)
 D-1 「社会正義の実践とその教育−生活困難者の支援から−」志賀文哉氏(富山大学人間発達科学部)
 志賀氏は自身が社会福祉士として野宿者や生活困難者(生活保護を受給しているが自立した生活を送れない人など)に対する相談支援活動をおこなっておられる。本演題は、その活動を、社会福祉職をめざす学生に対する授業科目の一部に組み込みつつ、より広い活動・議論の場を設け、福祉専門職の倫理綱領に記載されている行動原理である「社会正義」や「人権」について「現場を観ながら考える」教育実践についての報告である。若い学生たちが、日常生活からは想像もしがたいような極めて厳しい生活を送らざる得ない野宿者などの生活困難者に関わり、「現場を観ながら考える」教育の実践は将来、福祉職として彼らが活躍するときに大きな実りとなってくるにちがいない。今後の報告を期待する。
 D-2 「健康障害や社会構造により排除される野宿者〜胆道閉塞症の一事例より〜」福元進太郎(名古屋市立大学大学院医学研究科・医学部 5年)
 名古屋市中心部の野宿者支援のために夜回り活動に参加するなかで関わったS氏(胆道閉塞症罹患)の事例を通じて、野宿者を取り巻く社会保障・福祉について考察を加えている。健康を障害したことが契機となり野宿にいたる人も多く、野宿をする中で健康破壊が進んでいく。医療に期待される役割は大きい。福元氏のように学生時代から、野宿者をはじめする、医療や福祉から排除されている人たちに関心を持ち、積極的に関わる医学生がふえていけば 問題解決への道が少しずつみえてくるのはないだろうか。
 D-3 「障害者雇用と労働安全衛生管理」中村賢治(大阪社会医学研究所)他
 障害者枠で就職したにもかかわらず、障害の特性などを無視した労務管理により、二次障害や過労死に至ったと考えられる身体障害者の事例を報告し、障害者雇用と労働安全衛生管理についての問題に検討を加えている。これらの事例はいずれも障害のある身体機能を使わなければならないような作業に従事させられていた。障害者雇用が進みつつある中、障害者を雇用する事業者への教育啓発も含めて今後の重要な課題を提起している。

社会医学研究第26巻2号が発行されました。

 2008年度には、待望の年2号化が実現し、2008年6月末発行として、このレターを同封して会員に送付されました。また、編集委員長が2009年7月より交代しました。首都大学東京の星旦二先生です。星先生のご挨拶を掲載します。

編集長を拝命して

首都大学東京 星 旦二

 今回より新しく編集を担当することになった星旦二です。首都大学東京、以前の東京都立大学に勤務しています。都市の健康問題について、研究しています。日本社会医学会との出会いは、寮生活の学生時代からでした。東京都の区部の死亡率を23区別に比較すると、大きく異なることが報告されていたことが、とても「衝撃」だったことを覚えています。
 本誌は、健康課題を社会的だけではなく、支援環境の視点から総合的に展開できる、いわばヘルスプロモーションの意義を探り続けてきた歴史ある学会誌だと思います。
 実際の編集では、事務局に「おんぶにだっこ」状態ですが、今後とも優れた学会誌であり続けるように、出来る範囲で努力いたします。
 学会誌の充実度は、皆様の投稿が基本ですし、活字化して初めて共有化が広がるのです。皆様からの多くの投稿を期待します。また、若い方への入会にも期待します。
 どうぞ、よろしく御願いします。
社会医学研究編集委員長
星 旦二 star@onyx.dti.ne.jp (投稿は電子メールで)
第26巻1号の内容は、インターネットでも読めます。
http://ergo.itc.nagoya-u.ac.jp/shakai-igakukai/
まもなく、第26巻1号の内容もウエブにアップされます。
他に、創設以来の社会医学研究会・社会医学会の豊富な歴史が、50周年を記念して、インターネットに載りました。ご覧ください。

会費の納入をお願いします。

 同封された郵便振替(00920-6-182953日本社会医学会)の用紙で、2009年度分会費と未納分を、納入してください。2010年度分の前納も歓迎です。日付の記入のない部分が未納分です。
 また、銀行振込(名古屋銀行 本店営業部普3761624 日本社会医学会)もあります。銀行の場合、口座名が会員名と異なるならば、その旨FAX(052-789-4363)やメールでご連絡ください。

国民の健康・福祉の向上へ、新内閣の施策が注目されます。

 社会医学会会員の皆さまの諸方面での活躍が期待されます。

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