日本社会医学会 2011-1号 2011年10月16日修正発行
第53回日本社会医学会総会 ご案内(第1報)
企画運営委員長 高鳥毛敏雄(関西大学社会安全学部)
2012年の第53回日本社会医学会総会は、 7月15日(日)〜16日(月)に大阪府高槻市にある関西大学高槻ミューズキャンパス西館で開催します。大阪での開催は昨年に続いて2年ぶりです。
近畿地区の会員数は非常に多く、長年の蓄積もあり、史上最高の演題数と参加者をめざしたいと思います。
学会のテーマとして、「安心・安全な社会に向けて 〜社会医学の再構築〜」(仮)をかかげようと思っています。基調講演は、国際的なものにしたい、また、多数の特別講演、シンポジウムを行ないたいと思っています。
会員の皆さまの多数の参加をお待ちしております。
第53回日本社会医学会総会
総会日時:2012年7月15日(日)〜16日(月)
開催場所:大阪府高槻市 関西大学高槻ミューズキャンパス西館
JR京都線「高槻」駅 下車 すぐ
事務局(仮):NPO HESO井戸武實 事務局長・常任理事 山本繁
メールアドレス:npo@heso.or.jp (ヘルスサポート大阪)
第52回日本社会医学会総会のご報告
企画運営委員長(学会長)寺西秀豊(富山大学)
総会日時:7月23日(土)〜24日(日)
開催場所:富山大学五福キャンパス 参加者:131名
メインテーマ:地域における暮らし、仕事、健康と社会医学
プログラム構成:特別講演1題、教育講演1題、シンポジウム2題、一般演題61題、市民公開講座1題
第52回日本社会医学会総会は「地域における暮らし、仕事、健康と社会医学」をメインテーマに富山市で開催されました。今年3月11日には東日本大震災にみまわれ、多くの学会等が中止される状況でしたが、本学会を無事開催することができました。本学会員と関係者の皆様のご努力の賜物と感謝しております。特に一般演題が61題にのぼり、多数の会員の社会医学的活動と研究の成果が学会に結集され、主催者として大変うれしく思っています。
今回の企画はメインテーマ「地域における健康問題」に焦点を当てる形で企画運営委員会において論議、作成されました。総会シンポジウムでは「社会の安全と人権」を取り上げ、地域に埋もれた農村災害、健康障害、貧困・格差の実態と、そうした問題を解決しようとする地域医療機関等での試みが取り上げられました。特別講演では農村医学に長年取り組んでこられた佐久総合病院副院長 西垣良夫先生に「地域ぐるみの健康づくり」についてお話いただきました。長野県八千穂村における村ぐるみの健康管理活動の歴史と現在の到達点が分かりやすく紹介され、多くの教訓を学ぶ機会となりました。教育講演では金沢大学の市原あかね先生に「過疎問題と地域再生:北陸過疎地域の現状と再生可能エネルギーへの転換のもたらす再生可能性について」と題し、過疎地域再生の展望と夢をお話しいただきました。
シンポジウム「イタイイタイ病の教訓と東アジアの環境問題」は公開とし、環境問題の今日的課題について広い分野から報告、論議いただきました。この企画は富山大学東アジア「共生」学創成プロジェクトと共同で企画されました。タイ国からカドミウム汚染地帯で患者救済に当たっているウィタヤ医師にシンポジストとして参加いただき、アジアで起きている環境問題とその対策をつぶさに知る良い機会となりました。
シンポジウム会場入り口ではイタイイタイ病の病理像やカドミウム発生源対策などの環境関連ポスター発表も行われ、学生も交えた意見交換が行われました。また、学会本部事務局と協力して市民公開講座「原子力災害を考える」が企画され、原子力に関する基礎知識や放射線に係る健康影響について専門の先生によるご講演をいただきました。大震災後大きな社会問題となっている「原子力災害」の現状を知る良い機会となりました。
一般演題については、当初の予想を超える61題の演題をお申し込みいただきました。「地域保健」、「高齢・障害」、「メンタルヘルス」、「労働衛生」、「格差・貧困」、「医療保障」、「薬害」、「母子・学校」、「その他」など、20のセッションに分かれ報告が行われました。特に十分な論議が必要と考えられた「薬害」と「職場メンタルヘルス」はミニシンポジウムとして時間をとって活発な議論をいただきました。
富山の文化や自然を知っていただければ幸いと企画した岩瀬浜エクスカーションや学会懇親会時の富山大学学生フィルハーモニー管弦楽団演奏も好評で良い交流の機会となりました。
最後になりましたが、お忙しい中、富山での総会にご参加下さった会員の皆様、ご助言とご協力を下さった理事・評議員の先生方に御礼を申し上げます.事務局長の富山大学人間発達科学部の志賀文哉先生をはじめ企画運営委員の方々には大変なご苦労をおかけしました。また、富山大学東アジア「共生」学創成プロジェクトの先生方にもお手数をおかけしました。心より御礼申し上げます。
総会シンポジウムのご報告
志賀文哉(富山大学)
第52回総会初日にシンポジウム「社会の安全と人権」を開催した。司会は志賀文哉が担当した。
昨年11月のフォーラム「地方における暮らし、健康、人権と社会医学」をもとに、さらに社会の安全を検証することでそこに潜む人権問題を浮き彫りにしていく狙いを持っていた。シンポジウムでは、「農業災害事故の実際と予防」(大浦栄次、富山県厚生連)、「無料低額診療事業の取り組みからみえる運動課題」(吉田晶子、富山協立病院)、「難病者の経験からみる『安全』および『人権』に関する複層的課題」(伊藤智樹、富山大学)、「薬物依存症と人権」(岩田雅彦、大阪大学)という多彩なタイトルのもとで、地方都市の生活や場所にかかわらない現代社会の問題が提示された。
大浦氏は農作業事故の総数が減らない実態と、それが高齢者によるところが大きいことから高齢者への対応の重要さを示した。吉田氏はこれまでの無低診事業適用の事例検討を行い、支払困難による受診控えや本事業や公的制度でも支えることが難しいケース、同事業を契機とする社会資源化などを指摘した。伊藤氏は社会学の見地から、またご本人の支援実践から難病者の「安全と人権」を問い、複数の制度を利用することの困難さや行政の対応力のばらつきが問題点として指摘された。岩田氏は、薬物依存症の実態を普段の生活からは見えにくい情報を交えて報告され、薬物依存症は完治しないと前提せねばならないほど難しい病気であることの指摘があった。これらの報告を受けて討論では、無低診事業を可能にするのは本体事業(医療)における十分な収益かや、薬物依存症者に対応する民間組織の現状についての検討などがなされた。このような生活の細部に目をやる中で、生活者としてどのように対応できるのかという、総論的なまとめは難しいものの、何かの問題が露呈した時に、それを一過性の、また個別の問題のみとして捉えるのではなく、同じような事実や構造が社会には潜在的に含まれるのではないかという厳しい視線を絶えず向けていく努力であり、専門職としてのかかわりは、時として費用を度外視した、社会的使命を伴うものでなければならないと感じた次第である。
日本社会医学会の総会が開催されました。
2011年7月24日(日)、富山大学五福キャンパス・黒田講堂にて、2010年度/2011年度日本社会医学会総会が開催されました。
山田裕一理事長と寺西秀豊企画運営委員長が挨拶し、寺西氏が議長に選出されました。
はじめに物故会員をしのぶ黙とうがなされました。この1年、西島治子会員、芦沢正見会員、澤山信一会員が亡くなられました。
2010年度会務報告第51回総会(三戸秀樹企画運営委員長)が132名の参加者で、「貧困と社会医学:時代の変換点にたって」をメインテーマに開催されました。理事会(東京)は2回開催され、東日本大震災への対応、第52回総会の準備などがなされました。
ニュースレターが3回発行され、ホームページの充実、とくに第52回総会のホームページが創設されて、演題募集などに威力を発揮しました。「社会医学研究」誌は、星旦二編集委員長のもと、第28巻1号が発刊され、5月に発送されました。長期未納者が除籍されました。2010年度決算・監査報告が、逢坂隆子監事・千田忠男監事の報告とともに、承認されました。
2011年度会務予定が審議され、第52回総会(富山)について寺西秀豊企画運営委員長が、参加者数、演題数、奨励賞などについて報告し了承されました。理事会の開催、レター発行、機関誌「社会医学研究」の2号発行(それぞれ優秀論文2編程度を英文化予定)の会務が承認されました。英文のホームページの創設を検討することになりました。それらの予算案が承認されました。
その他の審議事項:名誉会員からの寄付(年に1口5千円)を引き続きお願いすること、社会医学研究の投稿料はなくし、別刷りは原則なし、希望する場合は実費自己負担となりました。企画運営委員長を学会長とも呼称することが決まりました。
2012年(第53回)は大阪・高鳥毛敏雄学会長(関西大学社会安全学部教授)のもと、高槻ミューズキャンパスでの開催を決定、2013年(第54回)は東京。星旦二学会長(首都大学東京)が開催することとなりました。名誉会員は、本年は該当者なしでした。
奨励賞が5名に授与されました。上村聡子、逢坂由貴、蒲原龍、高橋和行、前原なおみの5氏です。
イレッサ和解勧告への厚労省の下書き問題について、声明を出すことになりました。
座長のまとめ
ミニシンポジウム1:片平洌彦(新潟医療福祉大)、栗原敦(全国薬害被害者団体連絡協議会)
「薬害イレッサ事件の教訓と今後の課題」をテーマに、2011年7月23日(土)開催された。抗がん剤イレッサによる薬害事件(大阪・東京両高裁で控訴審審理中)の教訓と今後の課題を明らかにすることを目的に開催され、約25人が参加した。
片平は、2002年7月のイレッサの「世界に先駆けて」の承認に至るまでの「初期」における臨床試験やEAP(拡大治験プログラム)において、間質性肺炎による死亡が疑われる報告(少なくとも15例)が国内外であり、国と製薬企業(アストラゼネカ社)はそのことを「知っていた」が、危険性情報を患者・医療機関に適切に伝えなった事実を示し、この事件は「副作用問題」ではなく、明らかに「薬害問題」であると指摘した。中島晃は、「下書き問題」につき以下のように報告した:本年1月の東京・大阪両地裁の和解勧告に対し、高久史麿・日本医学会会長、日本肺癌学会等の学会などが相次いで和解勧告を批判する見解を公表し、被告らは、これらを受けて和解勧告を拒否した。その後、これらの見解が被告厚生労働省の働きかけを受けて出されたもので、厚生労働省は働きかけに際し見解の「下書き」まで用意・提供していたことが発覚した。学会が行政の要請に唯々諾々として従い何らの反省も示さないのは、学問研究の自由と独立を自ら放棄したものである。行政・業界・学会三者のもたれ合いは、福島原発事故でも厳しく批判されているが、こうした癒着の構造を一刻も早く断ち切ることが必要である。加藤幸(薬害イレッサ弁護団)らは、1980年に創設された「医薬品副作用被害救済制度」において、抗がん剤が対象から除外されている問題で、その除外の不当性と、除外しなかった場合の運用可能性、今後の課題(因果関係の認定と救済制度認知率の向上)を提示した。
以上の報告に対し、「イレッサが、日本で最初に承認され、米国では一旦承認されたがその後新規患者には原則禁止となった理由」「学問が独立性を確保することの重要性」「利益相反関係開示の必要性」「医薬品による副作用死の救済率が低いことが推測され、その原因と対策確立の重要性」「がん医療における抗がん剤の有効性と問題点・限界」等が討論の中で話し合われ、有意義なミニシンポであった。
ミニシンポジウム2:山田裕一(金沢医大)、天笠崇(代々木病院)
「働く者を守る職場メンタルヘルス活動のあり方」をテーマとして、4人の演者による発表が行われた。天笠は「新時代の日本型経営」が発表された1995年が、リストラ(失業)、成果主義賃金、非正規雇用が始まり、労働者の自殺が増加に転じた「職場メンタルヘルス問題元年」であること、現状では、一次予防対策が欠けており、特に労働者の教育が重要と述べた。また、現行の嘱託産業医の主導する職場メンタルヘルス対策に問題がある事例も挙げられた。石崎(金沢医大衛生)からは、ある職場でのストレス調査結果の経年観察から、会社主導の「時短」以降にストレスの悪化が止まったことや、最近の職場ストレス調査の傾向が紹介された。山崎(パブリックヘルスリサーチセンター附属ストレス科学研究所)はSense of Coherence (SOC:一貫性)という概念とその研究事例を紹介し、SOCが高い人ほどストレス下でも健康を保持できる傾向があり、労働者のSOCを高めることができる職場づくりが可能だと述べた。登坂(金沢医大衛生)は、職場復帰対策としてのリワークの考えと現状を紹介した。この評価は今後の課題だが、有力なアプローチとなる可能性が述べられた。討論時間がほとんどなかったが、それぞれの発表は内容が濃く、再度の討論の機会が望まれるものであった。
地域保健①:波川京子(札幌医大)
地域保健①は3題であった。高城らの「加齢受容と充実健康感を支える社会関係性の因果構造」は、首都圏の壮年期者を5年後に追跡調査をした結果、加齢を受容することで、充実健康感を高める方向に影響している可能性が示唆され、前向きな加齢受容ができるような支援が有効である発表であった。前原らの「高齢者見守り組織発展過程における専門職の役割」は、行動変容ステージモデルを参考にした分析で、専門職の意図的な関わりが住民のニーズを掘り起こし課題の明確化と意識化、住民・関係団体・行政のグループづくり、地域への発信と組織の基盤づくりにつながる発表であった。竹末らの「特定保健指導が対象者に与えた影響」は、特定保健指導を受けた30〜40代の男性を対象にしたインタビューから、特定保健指導は良い影響だけでなく、ネガティブな思いも引き出すという発表であった。
以上3題は、壮年期や高齢期の人々に専門職が支援を行う際の留意点を示唆した発表であった。
地域保健②:樋端規邦(健生石井病院)
4人が講演した。波川は、厚生労働省が検討している介護事業における外注化の可能性についてアンケート調査を行い、外注化できる範囲が小さく、外注化を避けたいという事業者の本音が明らかにされた。牧野は、平成の大合併に伴う公立病院の再編成で、成功例と失敗例が報告された。公立病院再編は避けがたい側面があるが、計画の段階で住民の意見をどれだけ反映したかが成否の鍵になると結論された。上田は、インターネットによる医療情報が適正に提供されるために、情報規制を強めることなく、誤った情報や不適正な情報を減らす努力について報告された。黒川は、大阪市西成地区の医療活動の経験から医療連携の強化、医療者同士の相互理解と協力の重要性を強調された。
高齢者・障害者①:垰田和史(滋賀医大)
中京学院大学の山本は「東京都A市在宅高齢者の認知症有病割合の推移:6年間の追跡調査より」と題して、2001から2007年にかけて行ったA市の在宅高齢者への質問紙調査を基に認知症有病割合の推移を報告した。診断された認知症者数だけでなく、質問項目の応答状況から潜在認知症者数を推定している点が興味深かった。甲南女子大学の上村は「地域包括支援センターの円滑な支援に向けたネットワークのあり方」と題して、A県下の全地域包括支援センターを質問紙法により調査した。自由記載情報を分析提示する手法で、ネットワーク形成に向けての課題を示した。首都大学東京の星は「高齢者の健康寿命を支える社会経済要因の因果構造」と題して、都市部在宅高齢者の追跡調査を基に、高齢者の健康寿命が社会経済要因を基盤として健康三要素を経て間接的に規定される因果構造を報告した。生活習慣と健康寿命との間に因果関係が成立しないという結果は興味深かった。
高齢者・障害者②:仁平將(元青森八戸保健所)
4題のうち、印象に残った議論を取り上げる。
介護の社会化(介護を社会全体で支える)という理念で始まった介護保険制度は、制度導入時には介護に係る費用負担はどうあるべきかが議論された。人口の高齢化と介護保険の認知と普及が相まって保険料と公費負担の上昇が当然出てきているが、国は将来の財政負担軽減と称して要介護認定基準の見直し等の制度改革を打ち出している。今回の発表では直接触れてはいないが、改めて費用負担の問題が議論の中で提起された。 市町村によってばらつきが大きい介護予防事業が適切に評価され、より効果的に事業が展開されるためにも使いやすい評価指標の開発が期待される。
高齢・障害③:福地保馬(働く人びとのいのちと健康を守る北海道センター)
在宅人工呼吸器使用ALS患者の停電時におけるサバイバル課題(関谷栄子ら):東日本大震災に遭遇した、長期間にわたり人工呼吸器を使用している二人の在宅ALS患者について、震災の影響とその対応の状況の聞き取りをし、支援と施策課題を検討した事例研究。日常の介護体制、地震発生時の心境、呼吸機器・吸引器の作動、ライフライン、コミュニケーション手段などの事象について、トラブルや対応の様子を聴取し、その評価・課題を示した。報告者は、充電式の呼吸器・吸引器の確保と迅速な保守サービス、自家発電装置などライフラインの確保のための施工補助金のような制度・施策、セルフケアを含めた通信情報手段の確立などが必要と考察した。スウェーデンから学ぶ高齢者の看取りケアに関連する制度−介護保健士教育制度と医療的ケアの関係の視点から−(後藤真澄ら):スウェーデンの高齢者ケアに携わる、ケア施設、研究機関、介護付き住宅など4か所の現場を視察し、スウェーデンの高齢者ケア制度、介護・看護職の教育制度、高齢者ケアの理念・自己決定の尊重、介護付き住宅への医療サービスにおける専門職の仕事の範囲と権利委譲などについて、日本におけるそれらの状況と比較しつつ紹介をした。今後、わが国においては、スウェーデンの優れた制度に学び、高齢者の看取りケアに関する哲学や理念を持ち、教育制度を見直し、仕事の権限や範囲を明確にして、ケアの質を担保していく制度が望まれると述べた。
メンタルヘルス①:北岡和代(金沢医大)
大学生におけるCES-DとSOCとの関連(澤目亜希ら)では、大学生を対象に、抑うつ状態と首尾一貫感覚(Sense of Coherence: SOC)との関連を検討した。抑うつ状態の低い学生はSOC得点が高く、抑うつ状態が高い学生はSOC得点が低く、両者に関連があったと報告した。ストレスモデルにおけるSOCの位置づけに関しては、多角的な検討を行い、研究をより深めていくことが必要と指摘された。大学生における携帯電話依存とその関連因子についての検討(上原尚紘ら)では、大学生を対象に、携帯電話依存の実態と関連因子を検討した結果が発表された。依存率は3割であり、依存学生の抑うつ傾向が高く、生活満足度が低くなっていた。各因子間の因果関係モデルの提示については、逆の因果関係モデルも考えられ、理論的な根拠づけが必要と指摘された。大学生の抑うつ症状と食習慣の関連(佐藤厳光ら)では、抑うつ状態にある学生に食生活の満足度、規則正しい食事時間、バランスの良い食事内容という食習慣を持っている者が少なく、逆に暴飲暴食する者が多くいた。また、肉類、果物、野菜、ワカメ・海苔、貝類の摂取率が低かった。食習慣の精神障害者のメンタルヘルスへの影響の研究である。
メンタルヘルス②:志渡晃一(北海道医療大)
山崎喜比古の「ストレス対処力Sense of Coherence (SOC)とその向上策は見えてきたか?」では、SOCの「見える化」とSOC向上策への示唆性という観点から広範な考察がなされ、フロアーを巻き込んだ有意義な討論が展開された。北岡和代の「社会福祉法人施設における苦情解決第三者委員としての実践活動報告」では、これまでの苦情解決第三者委員の活動報告がなされ、苦情へと発展することを予防することが委員としての真の役割であると表明された。 横山由香里の「トゥレット症候群を有する青壮年者の健康関連QOLに関連する要因の検討」では、健康関連QOLを左右する要因について、母親からの情緒的支援はQOLを高め、チックが重症な者やADHDの症状がある者ではQOLが低いことが示された。橋本顕子の「精神障害者社会復帰施設におけるICT利活用支援に関する評価」では、福祉的就労に従事する利用者に、パソコン環境を整備し、利用者の興味・関心を引き出し、ICT利活用に連動する継続的な援助の必要性が強調された。
労働衛生①:森河裕子(金沢医大)
我が国の職業手話通訳者の労働と健康状態−20年間の推移:演者らは手話通訳者の頚肩腕障害問題に継続的に取り組んでいる。1990年以来5年ごとに全国手話通訳問題研究会および全日本ろうあ連盟と協力して、手話通訳者の労働条件、安全衛生、健康状態についての調査を行い、本報告で過去5回の調査結果をまとめた。手話通訳者は女性が圧倒的に多く、50歳代が最頻である。非正規雇用者の割合が高く、5年以上の継続勤務者が少ない。手話通訳者数は増加しているが、推計必要数にまだまだ遠い状況が続いている。労働環境や労働条件の整備が必要であることが指摘された。健康状態については、頸肩腕症状のうち手話通訳者に特徴的とされる腕に関する有訴率は漸減していた。作業態様の改善の効果と考えられた。一方、頸や肩に関する有訴率はほぼ変化がなかった。頸肩腕障害重症例の発生が続いていることなど、改善すべき課題は多いことが報告された。
教員の労働負担軽減対策とその効果:演者が産業医として関わっている学校における、教員の過重労働や職場内ハラスメントの実態と、これらとの関連が疑われる事故や疾病の発生状況、さらにいくつかの対策の効果について報告がなされた。身体的、精神的労働負荷が過酷で、睡眠時間は著しく短かく、放置すれば、ほとんどの教員が健康障害となる状況であり、うつ病や事故が複数発生していた。
救急患者搬送時における救急隊員の身体的負荷の状況および負担軽減策:石川県の救急隊員128人についての労働環境・ケガや腰痛などの発生状況の実態調査報告である。最近1年の腰痛経験率は63%で、経験年数が長いほど率が高い。この背景に、都市部では住居が高層化しているがその割にストレッチャーがエレベーターに入らないために階段を用いざるを得ないなど、搬送方法に苦慮することが多いことが挙げられた。また、搬送時に患者家族とのトラブル経験も75%にあり心理的ストレスも大きい職業であることが改めて示された。救急隊員の身体的負荷の軽減には、狭いところで用いるストレッチャーを試作しており、他の側面(労働条件、作業態様、トレーニングなど)も重要と指摘した。
労働衛生②:久永直見(愛知教育大)
小規模事業所の産業保健活動と従業員の健康レベルの関連(森河裕子ら):石川県の一健診機関を利用した健診受診者数10人以上、従業員数300人未満の468事業所の健診データを、性別、事業所規模別に解析し、小規模事業所における産業保健活動や労働者の生活習慣の改善に関する課題を明らかにした有意義な報告であった。①分散事業所包含の有無、②従業員数規模を20人で区分した理由、③非正規労働者の扱い、④改善支援の方法、⑤農林漁業の結果、⑥規模と業種との関係に関する質問があった。
日本の警察官採用における色覚要件に係る変遷(高柳泰世ら):演者は、石原式色覚異常検査表を誤読する人を色盲・色弱として高校・大学入学や船舶操縦に制限を加えることの不当性を指摘し、その是正に導いてきた。今回は、警察官採用における制限の改善を働きかけた結果、「石原式色覚検査で正常」を要件とする都道府県警は2007年には全部から2011年にはゼロにできたことを報告した。一人の眼科医が声をあげ、国を動かすに至った経緯は、社会医学の優れた実践として、参加者に深い感銘を与えた。
格差・貧困①:田村昭彦(九州社医研)
高橋和行(早稲田大学)からは、介護保険料滞納者の経済・健康較差に関して保険者を対象とした調査が報告された。滞納者では、初回の平均介護度が4.20と一般の高齢者(2.98)と比較して高く困難度が高く、さらに滞納者では医療サービスの受診抑制も指摘された。低所得者でも安心して利用できる介護保険制度作りの基礎となる報告であった。小椋好子 (NPO HEALTH SUPPORT OSAKA)からは、釜ヶ崎の23の民間支援組織からの丹念な聞き取り調査を基に、年代ごとの医療支援の変遷をまとめた意欲的な報告が行なわれた。鍛冶葉子 (甲南女子大学)による、被支援者であるホームレス者からの聞き取り調査の報告で、(2)の小椋のものと合わせて、2000年代に入り健康・子供・文化も視野に入れた全人的支援と人間性回復の取り組みが大きくなっている事が強調され、社会的包摂推進の今後の方策に繋がる報告であった。
格差・貧困②:逢坂隆子(四天王寺大)
加美嘉史(佛大)「ホームレス自立支援センター退所者の就労・生活状況に関する考察」は調査をもとに、「就労自立」とされる退所者の21%が最低賃金以下、賃金額が勤労控除額を含む保護基準額を下回る者が42%という実態から、半福祉半就労を含む多様な自立の検討の必要性を報告した。中野加奈子(佛大)「ホームレス状態に陥った軽度知的障害者の療育手帳取得および就労支援について」は、近畿圏内のA無料低額宿泊施設を利用したことのある軽度知的障害者への療育手帳取得および就労支援の事例を取り上げてホームレス状態に陥った軽度知的障害者の支援課題について考察、障害者福祉とホームレス支援における問題共有化の必要について述べた。田中勤(中京大)「深夜の繁華街における10代風俗産業従事女性に関する社会医学的調査」は、法の網の目をくぐりぬけた10代風俗産業従事女性に対し深夜街頭聞き取り調査を行ない質的考察を加えた報告である。
母子・学校保健①:黒田研二(関西大)
落合富美江(金沢医大)ら「妊娠期から産後1か月にかけての親性発達とその変化−始めて親になる妻と夫の変化−」は、親性発達を調べる質問紙を用いて、某病院を受診した初回妊娠の妻と夫を対象に、妊娠期と産後1か月時の親性とその変化を調べたもの。親性の発達を促すことは課題だが、回答者が条件に恵まれた層に偏っている可能性が指摘された。小村三千代(東医保大)ら「訪問レスパイトの効果と課題−医療的ケアが必要な子どもを介護している母親の変化−」では、気管切開、経管栄養の先天性障害をもつ10代の男児に、1年6か月に渡り看護師と看護学生一組が、月1回程訪問してレスパイトケアを提供し、母親の気持ちの変化を調べた。こうした試みの効果を実証するとともに、制度化への提言が課題であろう。
中山直子(慶応義塾大)らの「子どもたちの生活習慣と保護者の心がけとの関連」は、小・中・高の児童・生徒1万1千人以上とその保護者を対象に質問紙調査を行い、共分散構造分析により、親の心がけは、子どもの健康に関する知識・歯磨を介して主観的健康・自覚症状に影響しているという経路を見いだした。小・中・高と進むにつれ、親の影響と併せて友達や学校教育の影響が強くなると思われるが、そうした変数を含む研究は今度の課題であろう。
母子・学校保健②:落合富美江(金沢医大)
「中華人民共和国における新婚検査と妊婦検査サービス利用との関連要因−中国の杭州市を例として−」高燕が欠席のため、中山直子が代理で発表を行った。中国における新婚検査の内容や検査の意味についての質問があった。高は中国の一人っ子政策のもとで「優性」を強く求め始められた新婚検査が婚姻法改正に伴い義務ではなくなったことから、新婚検査率が低下し先天異常児が増加している現状を改善したいと考えており、さらに周産期ケアの充実を目指しているとのことであった。逢坂由貴は、九州大学21世紀プログラム課程に在学し、福岡のNPO法人に所属し、外国人女性のための活動を行っている。「外国人女性の妊娠・出産・育児期における課題−福岡県における事例を中心にして−」では、福岡での事例をもとに、いかに外国人女性の妊娠・出産・子育ての問題があり、支援体制が如何に出来ていないかの報告がされた。
職場メンタルヘルス:三戸秀樹(関西福祉科学大)
「Job Stress and the Metabolic Syndrome −Hokkaido OccupationalCohort Study−」の発表では,職業性ストレスとメタボリックシンドロームの関係について、一定の関係性がいまだに判然としていないが、今回報告においても明確にはならなかった。「北海道の地域包括支援センターに勤務する3職種の抑うつ症状とその関連要因」の発表では,社会福祉士・保健師・主任介護支援専門員における抑うつ症状のある人は、仕事裁量度が低く、人間関係も悪く、身体症状があり、仕事・家庭・私生活に満足していない姿がうかがわれた。もっとも,福祉職に多く見受けられる非常勤労働者を常勤職と混ぜて解析しない方がいいのではないかとする意見もあった。「労働保険審査会での労基署不支給決定取り消し裁決の3事例の紹介−制度上の問題点と取組の教訓について−」の発表では、「労災認定判断指針」等改訂の際に寄与したハラスメントとうつ病に関する3事例報告があった。
医療保障①:高鳥毛敏雄(関西大)
市原京子(金沢医大)は米国の高齢者のヘルスケアについてメディケアに家庭医の加入率が低く初期医療に課題があること、長期ケアには公的保険が欠除しているため資産処分しないといけなくなる者も多いことが報告された。相談支援体制などについて質疑があった。杉本健郎(すぎもとボーン・クリニック)は、子どもの医療的ケアは超重症児加算など拡充されているのに、高齢者の医療的ケアとの制度の整合性が図られていないこと、高齢者ケアでは介護職に医療的ケアが任される方向にあることを報告した。医療的ケアの質の保証や医療職との協働システムなど人数の多い高齢者の医療的ケアの問題点が議論された。伊藤浩一(中野共立診療所)は、診療所の通院患者についてアンケート調査を行い、糖尿病患者の血糖コントロールの状況は医療費の経済的負担感などの関連が認められたと報告がなされた。分析の仕方についてと、教育歴、収入などが主として関係しているのではないかとのコメントがあった。
医療保障②:莇也寸志(城北病院)
この分科会では、①増成和平らによる「小児アレルギーと住居環境の関連」、②高鳥毛敏雄らによる「低蔓延時代の結核医療の課題」、③栗原敦らによる「医薬品副作用被害救済制度を国民に定着させるために-患者の権利・医療の質と安全の視点から-」の3演題が報告された。①では、小児喘息の予防の視点から居住環境の改善にも目を向けていくことの必要性が指摘された。アレルギー学会、小児科学会等関連学会との共同研究が必要と思われた。②では日本における結核罹患率が最も高い大阪における官・公・民の様々な人々や団体が共同で進める結核対策におけるパートナーシップ型の対策の必要性が報告された。③では薬剤副作用による死亡例の中で医薬品副作用被害救済制度による救済申請にいたる件数は8-11%(約1割程度)と依然として少ない実態が報告された。また、制度利用を阻害する要因として、国民の中での制度の認知度が低いことと制度活用に対する医療施設の姿勢の温度差が要因として指摘された。
その他①:関谷栄子(白梅学園大)
外国人の社会保障と多文化ソーシャルワーク(志賀文哉)では、外国人の社会保障制度に関する差別的な課題を整理された。国民年金(1982年)は当時60歳以上の人たちは非該当。当時20歳以上は障害年金の受給資格が非該当。みなし保険料免除期間が外国人には適用されない。在日韓国人は介護が必要になった世代も多いが、言語や生活習慣、文化の違いから介護保険利用が進まない。多言語、多文化ソーシャルワークの推進を起こす役割がある。
スギ花粉症の社会化(寺西宏太郎)は、「花粉症対策は、林業、経済、環境、医学の連携と協力が必要である。公害問題という概念がなく、被害者からの告発がなされない。エコロジー、脱原発、環境整備としての役割などの立法責任が問われる。」と述べた。
棚田における農作業災害の実態(広島大樹ほか)は、棚田の農作業事故の聞き取り調査である。草刈り機による作業事故が最も多く、急斜面での危険作業で重大事故が多発している。50代以下が半数である。棚田作業の心理的、肉体的特徴を伝え、危険回避、安全な農機の開発、労災適用などの課題を知らせていく必要がある。
その他②:服部真(城北病院)
The Related Factors of Emerging and Reemerging Infectious diseases in East and Southeast Asia. (Suwen Yang,Tokyo Metropolitan University):英語での発表だった。WHOと世界銀行のデータベースから、東・東南アジア14カ国の新興・再興感染症の罹患率と30項目のマクロ要因の関連が検討された。日本、韓国、シンガポールと他の11カ国では死因に占める感染症の割合が大きく異なり、因子分析ではsocioeconomic development, health care and sanitation, demographic shiftが抽出され、これら3要因と罹患率の構造方程式モデルが提示された。感染症の診断に関する国別格差、モデルの矢印の向きに関する質疑が行われた。
医療訴訟における医師の説明(福本良之、すぎもとボーンクリニック):民事医療訴訟の原告からの聞き取りから、医事紛争の回避のために、医療の安全管理のみではなく、医師や他の関係者の説明の重要さが指摘された。まれに起こる有害事象に関する説明の難しさを指摘する意見があった。
「戦争と医の倫理」検証の現段階について(西山勝夫、滋賀医大):15年戦争における日本の医学医療界の責任解明を求める活動の到達点と今後求められる研究や提言について報告された。戦後、米国に渡った秘密資料の行方と情報公開に関して質疑が行われた。
市民公開講座 『原子力災害を考える』 宮尾克(名古屋大学)
「放射線と健康」と題して、小橋元氏(放射線医学総合研究所・主任研究員)、「原子核エネルギーの悪用・誤用と内部被曝の軽視」と題して、沢田昭二(名古屋大学・名誉教授)の特別講演があった。一般市民やテレビ局も参加し、110名の参加で、わかりやすい講演であった。
会費の納入をお願いします。
会費の納入をお願いします。
同封された郵便振替(00920-6-182953日本社会医学会)の用紙で、2009年度と2010年度分、2011年度分会費、未納分を、納入してください。日付の記入のない部分が未納分です
イレッサ薬害訴訟でのいわゆる「下書き」問題について
日本社会医学会理事長 山田裕一
肺がん治療薬「イレッサ」による薬害訴訟において、2011年1月7日、大阪、東京の両地方裁判所から和解勧告が出されました。しかし同月下旬、日本医学会の高久史麿会長をはじめとして日本肺癌学会、日本臨床腫瘍学会、国立がん研究センター等から相次いで和解勧告を批判する「見解」が表明され、これらを受けて、被告であるアストラゼネカ社と国(厚生労働省)がともに和解勧告を拒否するに至りました。ところがその後、それらの「見解」の中に、厚労省が「下書き」文書を添付してまで依頼したものがあることが明らかになりました。厚労大臣の指示で調査が行われ、不十分ながら厚労省内で一定の処分も行なわれました。こうした事実はあらためて、業界(産)・行政(官)・学会(学)の根深い癒着の構造を明るみに出したものですが、とくに今回の「見解」表明において学会等がとった行為の問題性は、厳しく問われなければなりません。
第1に、学術研究団体である学会は自主的、自律的な組織であり、学問、研究の自由を守るためにも、その意思決定は学会として独立して行うべきものです。第2に、今般の東電福島第一原発事故に関連した行政の動きでも明らかになりましたが、しばしば業界の利益を優先し、国民の利益をないがしろにする行政当局との関係については、学会は特段の慎重な配慮をする必要があります。第3に、今回の厚労省からの依頼に基づく学会の見解表明は、訴訟の被告当事者の意向を、あたかも第3者である学会の総意のように装って代弁したものです。このような国民を欺く行為は、学術研究団体としての倫理にもとると言わざるを得ません。
国民の生命と健康を守ることを目的とし、スモン、薬害エイズ、薬害肝炎等についても、その根絶と被害者支援のための研究、活動を展開してきたわれわれ日本社会医学会は、今般のイレッサ訴訟における一部の学会等による厚労省依頼に基づく「見解」表明を、産・官・学の馴れ合いによる国民の利益と倫理に反する行為として厳しく批判するとともに、こうした問題が再び起こらないように、ともに努力を重ねることを国民の皆様ならびに関係諸団体に訴えます。
2011年7月24日
付記:本声明は、2011年7月23日富山で開催された日本社会医学会理事会、評議員会、および同24日の総会における審議の主旨に沿って行われるものです。
日本社会医学会 奨励賞 が表彰されました。
第52回日本社会医学会で、寺西秀豊選考委員長らにより、5名が奨励賞として、賞状と記念品が授与されました。
上村聡子、逢坂由貴、蒲原龍、高橋和行、前原なおみの5名です。おめでとうございます。
社会医学研究の投稿しましょう
すぐ投稿すれば、2011年末までに、掲載される可能性があります。星旦二編集委員長にメールで送ってください。
star@onyx.dti.ne.jp
投稿規程などは、
http://ergo.itc.nagoya-u.ac.jp/shakai-igakukai/
にも書いてあります。バックナンバーも読めます。第52回総会(富山)の発表講演集も全部読めます。
名誉会員の皆様 寄付を受け付けています
同封された郵便振替(00920-6-182953日本社会医学会)の用紙で、1年に1口5千円で、浄財のご寄付を受け付けています。何口でも歓迎です。
第53回日本社会医学会総会(2112年)の会場
関西大学ミューズキャンパスとは
■ JRでのアクセス
JR京都線で「高槻」駅下車、徒歩約10分
■ 阪急電鉄でのアクセス
阪急京都線で「高槻市」駅下車、徒歩約10分
社会医学会に設置されている倫理審査委員会
会員が所属する機関で、疫学研究等の倫理審査ができない場合に、本学会倫理委員会が代わって審査を行ないます。
日本社会医学会倫理審査委員会
委員長 波川京子(札幌医科大学保健医療学部)
委員 小橋 元(放射線医学総合研究所)
委員 平田 衛(関西労災病院環境医学研究センター)
日本社会医学会倫理審査委員会(案)
1.主旨
日本社会医学会は会員相互の協力により、社会医学に関する理論およびその応用に関する研究が発展助長することを目的としている。昨今、研究内容の倫理的な配慮が厳しく問われ、研究計画の実施、研究論文の投稿など研究の実施には、研究者の所属機関等に設置された研究倫理審査委員会の承認が必要になる。
しかし、所属機関等に研究倫理審査委員会が設置されていない学会員も少なからずいる。そうした日本社会医学会会員のために、学会の中に「日本社会医学会研究倫理審査委員会」設置する。
2.審査対象
日本社会医学会会員が主たる研究者として国内外で実施する研究で、人を対象とした社会医学に関する研究を審査対象とする。
3.審査内容
研究計画書の倫理的な配慮がされているか、科学的であるかなどを審査の対象とする。
4.倫理審査委員会委員の選出
日本社会医学会学会の職種から選出する。
倫理審査委員の任期は理事・評議員の任期に準じるが、研究内容により倫理審査委員で対応が困難な研究に対しては、委員会外部の意見を求めることができる。
5.倫理審査委員会の開催
必要に応じて随時開催する。
6.倫理審査委員会審査経費
審査1件につき1万円を学会に納付する。納付を持って倫理審査委員会を開催する。
7.倫理審査判定
1)承認
2)条件付き承認
3)不承認(再申請)
倫理審査委員会に、研究計画(あるいは、実施済みの疫学調査研究等に関して、論文投稿にあたって、倫理審査の実施が必要)の倫理審査を申請したい方、ご質問がある方は、波川京子委員長:namikawa(at)sapmed.ac.jp (at)は@です。
にメールで、お問い合わせください。学会員に限ります。
|